寿司職人ブログ

人生真ん中あたり

JKビジネスと性差別について

 MSは何の略でしょうと聞かれると、大半の人はマイクロソフトと答えるような気がします。しかし、神経内科医ならMutiple Sclerosisつまり多発性硬化症と答えるでしょうし、ガンダムオタクならモビルスーツと答えるかもしれません。英語の略語は人によって意味するところが異なってきます。

 しか"JK"は別です。ほぼ全ての日本人が JK=女子高生 と受け止めるでしょう。今から20年ほど前、わたしが高校生だったとき、コギャル文化が絶頂期を迎えていました。コギャルとは高校生ギャルの略ですが、コギャルのようなファッションの女子中学生のことはマゴギャルと呼ばれていました。茶色に染めた髪とミニスカートの制服とルーズソックス。こんな格好をしたティーンエイジャーが都会の繁華街に多数生息していたようです。

egg (エッグ) 2009年 11月号 [雑誌]

  コギャルについてはファッションリーダーや文化発信者だと好意的に評価する人もいる一方で、援助交際(という売春行為)を問題視したり言葉遣いの斬新さ・独特さを「日本語の乱れ」と断ずるなど否定的に評価している人もいます。社会学者の宮台真司先生なんかは「終わりなき日常を生きろ」などでコギャルを分析しておられました。わたしはその本を読んでないから中身についてはよく知りませんが。ただ、どちらかというと社会全体としては「好ましいとはいえない」ものとして捉える風潮があったように思います。それはおそらく「エンコー」すなわち援助交際、売春をしているというメディアの報道によるものが原因かと考えます。余談ですがドラマ「神様、もう少しだけ」でははじめての援助交際HIVに感染して死んでしまう女子高生役を深田恭子が演じて話題になりました。このように、女子高生=コギャル=売買春、という暗黙の了解のような認識が日本社会に浸透していったように思います。

 わたしの昔話はさておいて、Yahoo!ニュースに、作家の桐野夏生さんのインタビューを通じて「「根底にあるのは性差別です」――作家・桐野夏生が迫る、「JK」を取り巻く現代の闇 - Yahoo!ニュース『JK』を取り巻く現代の闇」と題したJK界隈に関する話題から女性に対する差別を糾弾する記事がありました。

 桐野夏生さんは、繁華街でJKビジネスに従事するティーンエイジャーを「なぜ危険なものに引き寄せられるのか」と疑問を抱きました。そこで「彼女たちは行き場を失っているのではないか」と仮説を立てます。 そこでティーンエイジャー駆け込み寺的な団体の代表を務めている仁藤夢乃さんなどから漂流するティーンエイジャーたちの実態を聞き出します。漂流ティーンエイジャーたちが漂流するのは貧困問題であったり、親が精神疾患を患っていたりとなかなかヘビーな現実を知って驚いたとのことです。(「最貧困女子」や「闇金ウシジマくん」は読まなかったのかな?)

最貧困女子 (幻冬舎新書)

闇金ウシジマくん 42 (ビッグコミックス)

また、売る側ではなく買う側についても取材しております。つまり男性はどう考えているのか、ということを明らかにしています。

女子高校生を欲望の対象とすることに罪悪感がないのは、言うまでもない。
「自身も女子高校生好きでJKビジネス店の経営に関わった40代の男性が、『自分たちは若い女の子の性を買うというより、彼女たちと恋をしているんだ』と言っていました。いい年をした男たちが16、17歳ぐらいの子どもを相手に、平気で『ときめきたい』などと言うのです。10代の少女に手を出すのは犯罪だと認識しないと、まずいでしょう」
恋愛だとすれば、少女たちは「性」だけではなく「感情」まで搾取されていると桐野は指摘する。

 「感情の搾取」が何を意味するかよく分かりませんが、当のティーンエイジャーたちは「オッサンと恋愛とかキモいw」って思っているような気がします。女子高生に不適切行為をおこなった元TOKIO山口達也さん(46)でもキモいオッサン扱いなのに。。。その意味ではお互い様であると言わざるを得ません。合法ティーンの18.19だとしても、30過ぎた男性が手を出すと世間的にはだいぶ気持ち悪い(特に女性から)と思われてしまいますので自重しましょう。

世の中には「売る女性が悪い」という声もある。前出のColaboは、児童買春やJKビジネスに関わった若い女性たちの声を集め、「私たちは『買われた』展」という企画展を開催した。少女たちが自らの言葉で、売春に至った背景をパネルやノートに綴った展示だ。すると、インターネットを中心に「『私たちは買われた』ではなく、『私たちは売った』ではないか」「体を売って儲けたのに被害者ぶるのか」とバッシングが起きた。桐野はこのような風潮に疑問を呈する。
「本当に居場所がなく、保護が必要な未成年の女の子がいて、大人に騙されて売春に至っている。そうした状況に対する想像力のない人が多すぎると思います。社会の歪みが表れているのに、個人レベルの話だと思っている。自己責任ではありません」

 たしかにティーンエイジャーの売春に自己責任を問うことはさけるべきです。生育環境、教育、社会的経済的支援がないことなど、多くの要因があり、売春に至るわけです。もしかしたら軽度知的障害スレスレの人かもしれません。中には「遊ぶ金欲しさで簡単に売春して被害者ヅラしてんじゃねえよ」と言いたくなる人もいるでしょうけれど。日本社会のいちど道を踏み外して穴に落ちた人に対する極端な冷たさはなかなかのものです。ただ「大人に騙される」とは言いますが、たいていは地元が同じ「先輩」の手引きによるものだったりします。根が深い問題です。

「根底にあるのは性差別です。性を売らざるを得ない女性を下に見てさげすんでいる。日本は社会全体に、女性への差別意識が強いと思います。賃金格差も大きく、まったく対等ではありません」

 「体を売らざるを得ない女性を下に見ること」は性差別と言うより、職業差別・能力差別なのではないでしょうか。身体以外に売るものがない、という意味において。そして賃金格差はまた別の問題です。女性が一家の大黒柱になれば賃金格差は解消します。夫、男性のみが重い賃労働を行うことは男性が搾取されているのと同じではないでしょうか。そして稼げない男性は存在すら認識されません。これが新自由主義と手を組んだ女性の社会進出論者の望んだ世界です。

日本は男女平等後進国と言われている。世界経済フォーラムが各国の男女平等の度合いを示した2017年版「ジェンダー・ギャップ指数」でも、日本は調査対象144カ国のうち114位だった。また、国税庁による調査によれば、平均年収は男性521万円に対し、女性280万円だ(平成28年民間給与実態統計調査結果より)。「世の中に違和感を持っている、怒っている女性はたくさんいます。選んで女性に生まれてきたわけじゃない。私自身、若い時に抱いていた違和感や憤りが、書くための原動力になっていました。それはいまも変わりません」

ジェンダーギャップ指数の低い国の代表にルワンダなどがありますが、そういう国を目指して良いものなのでしょうか。第一次世界大戦のころにイギリスやアメリカで女性の社会進出が進んだのは戦争で男が兵士として駆り出されて労働力が減った結果です。男が死ぬか、または家事育児やガーデニングなどに精を出せばジェンダーギャップを埋められると思います。また女性が男性をしのぐほど働いて稼いでも専業主夫として男性を養うようには思えません。ヨーロッパの覇者・ドイツのメルケル首相でも夫を養っているわけではないのです。バリバリ働く女性は子育てを移民のシッターさんにお願いします。同性の間の格差は生まれますね。

この手の主張をされる方々はたいてい女性は男性に搾取されるだけの存在であり、男女は競合し、罵り合う構造を望んでいるように見えます。男性に敬意を払わないで侮蔑して対立してくる女性に敬意を払おうとは思えません。

「ミステリーの世界は男社会でしたから、女の作家ということで随分いじめられましたね。インタビューで『ミステリーはお弁当箱みたい』と言った時にも、総スカンを食らいました。おかずの彩りや栄養バランス、配置などを考えて詰めていくから大変だという意味だったんです。でも、高貴なミステリーを弁当なんかと一緒にするなと怒られた。お弁当作るのは大変なんだよと、頭にきました」
自身も1児の母であり、毎朝の弁当作りには苦心していた。「馬鹿にされた、と感じる男は作ったことがないからだ」と前出のエッセーに綴っている。

これに至っては個人的な怨念というか、現場を見たわけではないから知りませんが自分の表現力や伝達力の無さを男性の無理解に転嫁しているようにしか見えません。言葉のプロたる小説家とはいえ人の子なんですね。わたしはミステリーのファンではないので「高貴なミステリー」という男性作家の認識もいささか不思議ですが。

 

 いろいろとケチをつけてしまいましたが、わたしは女性も男性も無意味に対立することなく次世代を育て、安定して秩序ある社会づくりに貢献していけたらよいと思っております。性差別、という言葉が男女対立を煽るだけのものにならず、社会を良くするために使われるものであることを願ってやみません。