寿司職人ブログ

人生真ん中あたり

人間が神となる時代

 STAP細胞事件の全貌を暴いた毎日新聞社の須田桃子さんの著作、「合成生物学の衝撃」を読みました。最新のライフサイエンスに興味のある人は必読でしょう。よくまとまっていて、面白い本でした。今月10冊目の本!

 クリスパーキャス9という、ゲノム(遺伝情報全体)の狙ったところにピンポイントで挿入したい遺伝子を挿入する技術が確立した現在、野心あるサイエンティストが目指しているのは「生命の全体的な理解のため、生命を作り出す」ことです。アメリカの某研究機関がフロントランナーになっています。これはリチャード・ファインマンの「自分が作れないものは、理解できない」という名言に基づく発想であります。生命の全体的な理解のためには生命の設計図たるDNAを人の手で合成し繋いだ「もの」が生命活動をする「生物」になるかどうか、失敗したとしたらその原因はどの塩基配列、遺伝子の組み合わせにあるのか、といったことを精魂こめて研究している人たちがいます。この研究者のグループがあまりにも優秀すぎる上、またアメリカ国防関係機関による豊富な資金提供と研究をスピーディーに進(めざるを得ない)システムとが組み合わさり、倫理的社会的落とし所が成立する前にテクノロジーだけが進みすぎております。アメリカという国は本当にすごいなと思わざるを得ません。

 ライフサイエンス界隈の話は、AIとはまた違う方向から人間の存在と定義を揺るがすのですよね。人の手で作り出したものが人間の実存を揺るがすという恐ろしい時代に生きていることを実感します。もっと書きたいことはありますがこの辺で。

合成生物学の衝撃


おススメです。