寿司職人ブログ

人生真ん中あたり

精神と物質と犯罪と


f:id:sushishock9:20180517111840j:image
 麻薬や覚醒剤に興味があります。

試してみたい、という意味ではありません。通報しないで下さい。誤解のないように申し上げますと、比較的単純な構造の化学物質が人間の肉体にも精神にも多大な影響を及ぼし、大きな社会問題となっていることに知的関心を寄せている、という意味です。

 麻薬や覚醒剤は医薬品としても使われていますが、医薬品として用いられるときは厳密にコントロールされています。それでも依存症が生じてしまいます。

 アメリカにおけるヘロイン中毒は、約8割が治療薬として処方された痛み止めの依存症がヘロイン中毒となるきっかけであると言われています。「痛み止め」とはいってもカロナールアセトアミノフェン)やロキソニン(ロキソプロフェン)のようなNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)ではありません。バイコデイン(ヒドロコドンとアセトアミノフェンの合剤)やオキシコンチンオキシコドン)などのオピオイド(ケシに含まれる陶酔や鎮痛効果のあるアルカロイドと呼ばれる化学物質の総称。生体内にも存在する)であります。よく「アメリカの医療は日本よりレベルが高い」なんて言う人がいますが薬物、とりわけオピオイド系鎮痛薬が濫用されてヘロイン中毒者を生み出しているのに、どこがレベル高いのかなと疑問を抱いてしまいます。

 麻薬の定義としては化学的なものと法的なものがありますが、法的な定義では国によって異なります。従って当ブログでは、麻薬は化学的なものーすなわちケシから生まれたラリっちゃう化学物質ーヘロイン、モルヒネ、阿片ーを指すこととします。

 麻薬の原料となる化学物質を産みだすのは「ケシ」です。ケシの総称は英語ではpoppyです。全てのケシにアヘンの成分が含まれているわけではありません。ケシの実を傷つけると乳液が出ますが、その乳液にモルヒネのもとが含まれているわけです。


f:id:sushishock9:20180517111833j:image

麻薬のもととなる物質を含むケシと含まないケシ(園芸品種)が存在します。前者は日本にも自生しています。あへん法により取締まりの対象となります。見分け方のコツがウェブサイトに載っていましたのでご紹介します。誰かの家の花壇に違法なケシの花が咲いていたら迷わず通報して下さい。ちなみにヒナゲシ虞美人草)やオニゲシはアヘン成分を含んでおらず、あへん法による取締り対象にはなりませんのでご安心ください。

ひなげし

ひなげし

 なお日本に生えている取締り対象となる有名なケシはアツミゲシというものです。帰化植物です。その名の通り愛知県の渥美半島に定着しています。

 アツミゲシの実は確かにアヘン成分を含んでいるのですが、サイズが小さく、実際にアヘンを抽出しようと試みても徒労に終わることになるようです。従って、麻薬を作ろうと思ったらアツミゲシ(セティゲルム種:実はピーナッツサイズ)とは別の種のケシ(ソムニフェルム種:実は鶏卵サイズ)が用いられるようです。初めてアツミゲシが日本で見つかったとき、愛知県警のみならず自衛隊まで出動したとウィキペディアに載っていました。そしてアツミゲシの花が咲いているのが見つかるたびに警察と保健所が出動する騒ぎになるそうです。大変繁殖力が強く、駆除しても駆除してもまたどこかで生えているようです。なんとなくトムとジェリーみたいて微笑ましく思います。

トム&ジェリー DVDプレミアムボックス 5巻セット 全30話 イエローパッケージ

 アヘン・モルヒネ・ヘロインはケシの実をもとに作られることがおわかりになったことと思います。同じものから作られていても呼び名が違います。これらの違いは何でしょうか。

 まずアヘンから。アヘンは、ケシの実を傷つけたときに出てくる乳液すなわちケシの果汁を乾燥させたものです。ケシは英語でopium poppyとも表しますが、opiumの中国語読みがa pian(アーピエン)となります。これに漢字をあてると阿片になります。かつてはタイ・ラオスミャンマーがアヘンの一大産地だったそうですが(黄金の三角地帯)、現在は殆どがアフガンで造られているそうです。シュメール人の時代から人類とアヘンの繋がりがあったと言われております。その後古代エジプトでも鎮痛薬として使われていたこともわかっており、大昔から医薬用に用いられてきました。

 このアヘンの持つ鎮痛効果の成分は何なのだろう?ということでアヘンから抽出されたのがモルヒネ(morphine)です。1804年にドイツの薬剤師がアヘンからの単離に成功したと言われています。この薬剤師さん、うつ状態になるとモルヒネを服用して中毒に苦しんでいたようです。あぁやっぱりと思わずにはおれません。わたしは純粋な科学的探究心から、アヘンからモルヒネの単離法を知りたいと思ったのですが、世の中にはこういう怪しい感じの方もおられるようです。。
f:id:sushishock9:20180517063925j:image

 そして麻薬の女王とも呼ばれるヘロインですが、これはモルヒネをもとに合成されたものになります。ヘロインは商品名です。一般名(成分名)はジアモルヒネのようです。モルヒネを無水酢酸で長時間煮るとヘロインができるようです。

 ドイツを代表するバイエルという会社(の前身)が売り出していました。販売当初は「モルヒネにかわる依存症のない夢のような薬」として宣伝したといいますから恐れ入ります。バイエル社のHPの製品一覧のところにはヘロインの項目はないようです。

※精神依存も肉体依存も有害性も高い、走攻守揃ったクイーンオブ違法薬物がヘロインです!
f:id:sushishock9:20180517111858j:image

 ケシの果汁をもとにしていますが、アヘン→モルヒネ→ヘロインと精製(不純物をなくす)するに従い、効き目がグレードアップします。ノーマル悟空→界王拳悟空→スーパーサイヤ人悟空みたいなもんでしょうか。オッサンなので喩えが古くて申し訳ありません。

 ざっくりとオピオイド系ーその名の通りopiumから抽出される麻薬ーの違いについて触れてみました。これらオピオイドがどのように人の肉体・精神を蝕み破壊するのか、追々まとめていこうと思います。世間で話題の脳科学神経科学)というものは、基本的にはモノアミン(ドパミンセロトニン)やオピオイドを使って脳のどの部位がどうなるか、ということを研究する学問領域であるという偏見を抱いています。茂木健一郎さんが急死したら薬物のオーバードーズを疑え、と言っているわけではありませんのでご注意下さい。それではみなさん、また次回。