寿司職人ブログ

人生真ん中あたり

ガン・肥満・飲酒

統計学が最強の学問である」という本や近年のビッグデータ関連の話題など、統計界隈が盛り上がっています。データサイエンティストの求人も増えているそうですね。近年ますます「数字の裏付け」が求められる世の中にはなってきています。「○○な人は☓☓になる」ではなく「○○を▲年以上続けている人は△年後に、それをしなかった人と比べて☓☓となっているリスクが■%増える」などと。特にビジネスの現場において前者と比較して後者の説得力は段違いに高いでしょうね(少しウザい気がしないでもないですが)。

統計学が最強の学問である

 昔からこの統計が力を発揮していた分野があります。生命保険の分野もそうですが、医学、とりわけ公衆衛生の領域(主に感染症)でその力を発揮してきました。記録を取り続けることは大切です。それにより患者数や死亡者数が明らかに少ない群と犠牲者だらけの群を調査比較検討し、必要な介入行為を明らかにするわけです。

人口・疫病・災害 (講座 文明と環境)

 さて、タイトルに関係する話をしていきます。最近報告されたイギリスの調査結果です。524万人を対象にした追跡調査です。22種類のがんのうち17種類のがんは肥満するほど増え、特に大腸がん、肝臓がん、胆嚢がん、膵臓がん、子宮がん、腎臓がんなどは肥満の影響を受けやすいことが分かった、というものです。肥満は糖尿病や心筋梗塞など生活習慣病のリスクとなることは皆さんご存知だったかと思いますが、がんにも関係していたのですね。デブはがんになりやすい。デブはカロリーを摂りすぎているわけですから、他の生物の命をより多く奪っていることになります。因果応報ではありませんが、他の命を貪るものは自分の命も蝕まれるということなのでしょうか?ファナティックな仏教徒の中にはそう考える人がいるかもしれません(冗談です)。

畜生・餓鬼・地獄の中世仏教史: 因果応報と悪道 (歴史文化ライブラリー)

 先程紹介したのはイギリスのデータでした。日本においても肥満とがんの発生に関するデータがあります。国立がん研究センターの2004年の調査ですが、興味深いことにこのデータの結論としては「非常に痩せていると、将来がんになりやすい」とするものだったのです。BMI23.0-24.9(いわゆる標準の体重です)のグループのがん発生率を1.00と(すなわち基準値)して様々なBMI群におけるがん発生率を比較しています。BMI30.0-39.9の群では基準グループの1.22倍の発生率でした。なんとBMI19未満のグループでは、これより更に高い1.29倍という発生率だったのです。横軸にBMI、縦軸にがん発生率をとるグラフにおいて、がん発生率はU字型に分布する、ということがわかっております。がんによる死亡率も発生率と同じU字型の分布を示します。実は死亡率はBMI19未満の激やせスキニー群のほうがBMI30以上の巨デブ群より高い傾向にあったのです。低栄養状態による免疫機能(がん細胞を殺すNKT細胞など)の低下が、この減少を説明するメカニズムとして考えられています。

免疫の意味論

 太り過ぎも痩せすぎもいずれも健康を損ないますし、健康を損なった結果でもあるといえましょう。生活習慣の結果そうなるのは避けたい。肥満を招くのは運動不足、過食、飲酒であります。飲酒は多様な経路で肥満を招きます。シメのラーメンを食べなければいいんだろうとツマミを多く食べた結果、カロリー摂取過多になるという笑い話のようなケースがありますし、その上シメラーメンの誘惑に負けてしまうという笑えない話もあります(私のことですね)。「このラーメンは心筋梗塞脳卒中の原因であり、しかもガンのもとにもなるのだ!」と思い込めば恐ろしくなり、多少はラーメンを控えるようになりますがひとたびアルコールが入り、飲み会が楽しいものだと最後は楽しい仲間たちとシメラーメンに走ってしまうものなのです。人は弱いものであります。

ラーメンより大切なもの?東池袋大勝軒 50年の秘密?

 肥満・ガン・飲酒。意思の力ではなかなか勝てない相手です。ガンは遺伝子の疾患でもありますから、生活習慣だけでどうにかなるものでもありませんが、健康寿命を伸ばしたい人におかれましては習慣の力をもって彼らから遠ざかる努力をする必要があるのではないでしょうか。元気で楽しい人生を送りましょう。