寿司職人ブログ

人生真ん中あたり

【健康】あなたの眠りは何時間?「脳の老廃物」排泄と睡眠について

 前回の記事からの続きです。

 まだ読まれていない方はこちらをどうぞ。

【健康】ボケたくない!認知症の発症リスクと睡眠の関係について① - 寿司職人ブログ

 前回の記事では、認知症には多くの種類があること、代表的なものとしてアルツハイマー認知症があげられること、アルツハイマー認知症の発症には「アミロイドβ」という物質がカギを握っているらしいこと、そしてそのアミロイドβと睡眠には関係があると言われていることを書きました。

 認知症の患者さんの多くが睡眠障害を合併していることが知られています。昼夜逆転して夜中に起きて大声を出すなど、ときどき耳にすることがあります。覚醒と睡眠のリズム、すなわち概日リズムが崩壊することで昼夜逆転すると言われています。昼間ウトウト、夜間ウロウロ、というわけです。同居するご家族の苦労心労はいかばかりでしょう。このような場合には概日リズムを整える薬を服用されたり、昼間ウトウトしないようにデイサービスなどに通わせたりといった対応が必要となってくる場合があります。

 また、これとはまさに真逆の因果関係になりますが、「睡眠障害があることで認知症を発症しやすくなる」ことが近年の研究で明らかになりつつあります。一体どのような内容なのでしょうか。以下はナショナルジオグラフィックからの引用です。

米国の調査だが平均年齢83歳の高齢女性1282人を約5年間追跡したところ、期間中に195 人(15%)が認知症を発症し、302名(24%)は軽度認知障害認知症の手前の状態)になった。この数字自体は年齢を考えれば妥当である。この調査ではアクチグラフという高性能万歩計のような機器を用いて、調査に参加した高齢者の活動量を分単位で計測している。このデータを解析すると日中の活動性や睡眠の様子を客観的に知ることができる。その結果、日中の活動性が低く夜間の眠りの質が悪い高齢者は5年後に認知症や軽度認知障害になるリスクが1.57倍高かったそうだ。

第28回 認知症と睡眠の切っても切れない関係 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

 認知症を発症するメカニズムや要因は多岐にわたると言われています。糖尿病の有無や教育歴の長短、遺伝的背景など。。。この研究結果の解釈としては

日中の活動性の高い高齢者は、社会参加も活発で、頭をよく使い、運動量が多く、さまざまな感覚刺激を受け、食事を含む規則正しい生活スタイルを維持しているのだろうか。これらの各要素は認知症の予防に有効であるという報告がある。合わせて一本! といったところなのだろう。

と書かれていました。メリハリのある生活が認知症の予防には効果あり、ということでしょうか。この記事の続きにはこうあります。少々長いですがご容赦ください。

アルツハイマー病ではアミロイドβというタンパク質が脳内で過剰に蓄積することが病因と考えられている。アミロイドβは健康な人の髄液中にも存在するが普通はごく短時間で分解される。アミロイドβ濃度にはもともと昼間に高く夜間に低いというリズムがあるが、アルツハイマー病患者ではこのアミロイドβの昼夜リズムが崩れているのだ。特に夜間のアミロイドβ濃度の「高止まり」が発症を促しているのではないかと考える研究者もいる。

 睡眠の質もアミロイドβ濃度に影響するらしい。たとえば、最近登場した新しい睡眠薬であるオレキシン受容体拮抗薬。この新薬は覚醒物質であるオレキシンを抑えることで睡眠を促すだけではなく、夜間のアミロイドβ濃度を下げる効果もあるという。逆に徹夜(断眠)させるとアミロイドβ濃度は上昇する。このようなデータを見るとメリハリのある睡眠リズムを保つこと、質の良い睡眠を保つことがアミロイドβの蓄積を抑える観点からも良さそうである。

睡眠時間が少ないと昼間に溜まったアミロイドβアルツハイマー認知症の原因物質とされています)を夜間に排出できず、アミロイドβが蓄積した結果、アルツハイマー認知症を発症してしまうのではないかという仮説といえましょう。このほか「昼間の耐えられない眠気」と認知症の発症リスクとに相関関係があることも分かってきています。眠りと認知症ー健康的かつ平穏な老後の生活を脅かすーの関係について、分子的なメカニズムを含め、研究が進むことを願ってやみません。

 良い眠り(質の高い眠り)を実現するにはいくつかのポイントがあります。こちらもリンクを貼っておきます。よりよい眠りのための12のヒント - 眠りの総合サイト 快眠推進倶楽部

 私はいまは禁酒していますが、以前は眠るために寝酒を嗜んでいました。寝酒は確かに入眠だけの効果なら高いのですが、睡眠維持に対してはマイナスに作用します。つまり夜間に目覚める中途覚醒が起きてしまい、睡眠の質を低下させやすいというわけです。寝酒を飲むくらいなら睡眠薬ベンゾジアゼピン系やエチゾラムは依存性があるので避けたいところです)のお世話になったほうが良さそうです。なお、睡眠薬の服用と認知症の発症についても関係があるとかないとか、controversialな状況です。お酒を含め、内服するものに頼らない状況が一番望ましいですけれど。

 人生を80年、睡眠時間を平均で6時間とすると80年生きているうち20年は眠っている計算のわけです。この20年間の「質」が残りの意識のある60年の「質」に大きな影響を与えていることになります(ショートスリーパーの人もロングスリーパーの人もいるので、睡眠の量ではなく質が大切です)。より健康な人生のため、睡眠に少しだけこだわってみませんか?