寿司職人ブログ

人生真ん中あたり

【読書感想文】官僚の反逆

 

官僚の反逆 (幻冬舎新書)

ゴールデンウィークだからインプットして思索する時間を意識して増やそうと思います。連休初日に読了したのは中野剛志の「官僚の反逆」です。著者も作中で触れていますがオルテガ・イ・ガセットの名著「大衆の反逆」を意識したタイトルです。オルテガの著作の中では実際の階級としてではなく人間の生きる姿勢としての「貴族」と「大衆」を対比させています。

大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)

本作においてはこのオルテガの大衆論に政治学の泰斗であるマックス・ウェーバーの官僚制度論を加えた視点(「支配の社会学」ですね)からグローバル時代の政治・官僚制度・大衆化社会を分析しています。ただの分析で終わらせず、「政治を取り戻そう!」との熱いメッセージが込められています。

 面白いのは「グローバル化」と「官僚制(というか、「官僚的なるもの」というほうが適切か)と「大衆化」は実はトリニティ(三位一体)であるという視点です。通俗的には「大衆」は「官僚制」を唾棄していそうなものですが、実は大衆化とはグローバル化であり、それはとりもなおさず「官僚的なるもの」を強固なベースとしている構造があるというのです。ネオリベ、いわゆる新自由主義が伸長したのはグローバル化が叫ばれ始めた頃だったと記憶しています。グローバル化の権化であるマクドナルドを例に挙げてグローバル化と大衆化社会と官僚制の本質を暴いています。10年ほど前の熱狂的政治シーン、つまり小泉旋風による政治破壊により実は官僚制(吏員型官僚による)が一気に進展してしまったとの分析には説得力があります。財務省族議員である小泉さんに対し、経産官僚である中野剛志氏が抱いている感情というものも複雑かもしれませんけど。

 かなり大雑把な内容紹介となりましたが、「富国と強兵」の作者である中野剛志氏の著作はやはり面白いなと感じました。みんなも連休を活かして読書するのも良いかもしれませんね。