寿司職人ブログ

人生真ん中あたり

【健康】ボケたくない!認知症の発症リスクと睡眠の関係について①

 「認知症」と言っても、多くの種類の認知症があります。いったん正常に発達した認知機能が何らかの原因で低下し、日常生活に支障をきたすようになった状態を認知症といいます。「何らかの原因」とあるように、原因は多岐にわたります。

 有名どころでは、アルツハイマー認知症です。発症の原因としてはアミロイドβという物質が脳に沈着することによって脳の神経細胞が脱落、つまり大量に死んでしまうことが考えられています。「考えられています」という表現には理由があります。あくまでアミロイドβアルツハイマー認知症の発症の原因であるというのは仮説に過ぎない、ということです。原因物質としてアミロイドβのほかにリン酸化タウタンパク質というものが考えられていますし、リポ蛋白のある種の遺伝子のタイプの人は将来のアルツハイマー認知症発症リスクが極めて高いと言われています。また、ややこしい話になりますが、厳密にはアルツハイマー病とアルツハイマー認知症は違います。アルツハイマー病とは家族性、つまりある遺伝子のタイプが引き起こすものです。映画「アリスのままで」ではジュリアン・ムーアが若年性アルツハイマー病を発症する大学教授を好演していましたが、まさにこの家族性アルツハイマーでした。家族性アルツハイマー病では遺伝的にアミロイドβが蓄積しやすく、アルツハイマー認知症(かつては老人性アルツハイマー認知症、SDAT;senile dementia of Alzheimer type)と比較すると若年で発症するとされています。

アリスのままで(字幕版)

アルツハイマー認知症の主な症状は記憶障害すなわち「もの忘れ」が有名です。しかし、3日前に食べたご飯の内容を覚えておらずヒントが出たら思い出せるというようなある種微笑ましいものではなく、「ご飯を食べたことそのものを忘れる」ということです。「アリスのままで」では、「ごっそり抜け落ちる」と表現されていました。

 そして記憶障害に留まらず、やがて空間失認(そしてそれに伴う徘徊)、実行機能障害(料理が作れなくなる)が現れてきます。自分一人では風呂に入れなかったり、服を着替えられなかったり、トイレで用を足せなくなってしまうのです。最終的には寝たきりになります(わめいたり便をこねたりするのはすべてのアルツハイマー認知症患者に現れるわけではなく、環境や家族・介護者との人間関係に依るとも言われています)。

 アルツハイマー認知症は根本原因が突き止められておらず、根本治療が不可能な疾患です。進行にブレーキをかける薬はありますが、ブレーキをかけるだけで、疾患は進行します。ゆえにアルツハイマー認知症は「不治の病」であり、「かかりたくない疾患」の上位に位置しています。しかし年を取れば誰にでも発症する可能性があります。認知症になる前に死ぬことができればよいのですが、なかなかそうもいかないのが世の常です。であれば、なるたけ発症時期を遅らせる、つまり予防することが重要になってきます。その予防法として重要なのが、われわれに欠かすことができない「睡眠」なのです。

つづく