寿司職人ブログ

人生真ん中あたり

【読書感想文】サピエンス全史下巻

 サピエンス全史の下巻を読了した。

サピエンス全史 単行本 (上)(下)セット

人類(現世人類、つまり我々)の登場と農耕・言語や文字の発展が中心的に記載されていたサピエンス史のいわば前半部分を中心に描かれていた上巻に対し、下巻では人類がいかに科学技術を発展させ、その科学技術がおそらくそう遠くない未来に人類にもたらすさまざまな可能性を警告を交えて描いている。時間の経過としては上巻は数百万年スパンであり、下巻は数百年のスパンである。この短い数百年というスパンで人類は飛躍的に生活レベルを向上させた。これからの数十年では一体どう変わっていくのだろう。下巻でも触れられていたが、「特異点(シンギュラリティ)」を迎えることになるかもしれない。

シンギュラリティは近い[エッセンス版] 人類が生命を超越するとき

(「特異点」の向こう側は感知することができないから特異点なのだけど)

 

 それはそれとしておいといて、この本で面白かったのは、「人類は確かに狩猟採集時代や中世と比べると生活レベルは遥かに向上し赤ん坊も死ななくなったが、果たして人類は幸福になったと言えるのか」という問である。じつはこのような幸福に関する学問的検証というのはあまり行われてこなかったそうである。宗教のほうでは行われてきたのでしょうけれど。現代人より、死後天国に行けると信じていた、生まれてから町を一歩も出ておらず農耕と家畜の世話に明け暮れていた中世の農民のほうが幸せをより感じていた可能性もある。

 人間は絶対者ではなく、相対的な存在であるーまさに人「間」であるーはずだったのだが、もはや絶対者に成り代わろうとしている。かつてはサバンナやジャングルで捕食者に怯えていたか弱い生物種であった。しかし認知革命を経て言語を獲得し、帝国主義と資本主義をマッチアップさせて科学技術を進化させてきた結果、任意の生物種ーそれがかつての人類の捕食者でも!ーに好きな遺伝子を導入できるクリスパー技術や自然現象を分解する恐るべき演算力をもつスパコンなどによって、この地球上で70億個体と増えるまでに至った。しかしその科学技術が人類を滅ぼすことにー科学技術によってやってくるであろう「超サピエンス」にーかつてネアンデルタール人が滅ぼされたようにーなるかもしれない。我々人類が発達させた知能が、エデンのリンゴにならないことを願うばかりである。